
復帰を前提にした治療
予防と能力向上も視野に
2015年、『熊本回生会病院』の新病院開院と同時に、熊本で初めて開設された『スポーツメディカルセンター』。学生スポーツ選手からプロアスリート、シニアのスポーツ愛好者まで、幅広い年齢層が診察にやってくる。センターを統括する鬼木医師は「当センターでは、ケガの手術や治療に加え、ケガを繰り返さない予防、さらにはパフォーマンスの向上を視野にいれた独自の治療を行っています」と話す。
鬼木医師はスポーツ外傷の中でも難しいとされる膝前十字靭帯損傷の再建手術など、靭帯・軟骨などの手術を数多く手がけ、その症例数や実績は県内屈指の整形外科医。患部の手術や治療と並行して、種目別や年齢など個人に合わせた復帰までのプログラムを作成し、トレーニング法や食事、薬、サプリメントの指導も含めたきめ細やかなサポートを行っている。
術後、できるだけ早い時期からリハビリがスタートできるよう、最大で自分の体重の20%まで免荷できるトレーニングマシン〝AlterGR〟や、筋肉の回復具合を数値化する装置〝サイべックスノルムR〟など高性能なマシンや機器の充実ぶりにも目を見張る。さらにケガで落ち込みがちなメンタル面においては、心理的協議能力診断(ディプカ)などを採用し、データに基づいた心理的ケアも行いながらリハビリテーションを進めている。
専門性の高い治療を求めて
急増するスポーツ外来患者数
驚くのは同院のスポーツ外来の患者数の増加率。専門外来の開設当初の2013年の650人に対し、2017年には5599人の約8.6倍にも増えている。難しい再建手術などに対応できることも要因だが、近年米国のメジャーリーガーなども採用した再生医療の一つである自己多血小板血漿注入法(PRP療法・自由診療)も手掛けるなど、より先進的な治療法を導入しているのも理由の一つ。
実際ケガに悩むアスリートたちの間に口コミで広がり、患者は全国からやってくるという。「当院には種目別の専任のリハビリスタッフがいることも特徴です。日々、担当種目を徹底的に研究して回復からケガの再発防止、競技能力の向上へと導いていきます。彼らは国体選手や学生競技者のトレーナーとしても活躍するスペシャリストなのです」。実践を共有しながら、有効なトレーニング法を研究しアスリートと一体となってパフォーマンスの向上を目指すという。
若い学生たちにとってスペシャリストのケアは、その後の競技人生に大いにプラスになるのも確か。ケガで好きなスポーツを諦めないように、一人でも多くの人がスポーツを通して豊かな人生が送れるように、そんな思いを持ちながら同センターの活動は続いている。


