熊本市南区砂原町341
治療の3本柱は食事・運動・薬。
糖尿病は早期診断と治療がカギ
予備群も合わせると約二千万人といわれる糖尿病。女性より男性が、また年齢を重ねるほどかかりやすい傾向にあることから、超高齢社会が加速するなか、その増加が懸念されている。
そもそも糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリン(ホルモン)の働きが足りないために血糖値が異常に上昇する病気。診断の目安としては血糖値が空腹時に126mg/dL以上、食後で200mg/dL以上またはヘモグロビンA1C検査結果が6・5%以上の場合、糖尿病と診断される。おもな症状は疲れやすい、喉が渇く、多尿、体重減少などがあげられる一方、原因を特定するのは難しい。現役世代ほど仕事や家事が忙しいなどの理由から受診へ行かない傾向にあるが、放っておくと取り返しがつかなくなることも。一番怖いのが合併症だ。「血糖値が高い状態のまま長年放置していると、やがて全身の血管が傷んで動脈硬化による大血管障害(脳梗塞、心筋梗塞、壊疽)や3大合併症(網膜症、腎不全、神経障害)を引き起こす恐れがあります。ほかにもアルツハイマー型認知症の発症が早まるなど影響は多岐に及びますから、症状が軽いうちに診断を受けることが肝心です」と語る土井院長。「糖尿病になると一生治らない」と思われがちだが、治療法の3本柱である「食事・運動・薬」を上手く組み合わせれば、薬がいらなくなることも。熊本において数少ない内分泌疾患専門医・指導医である土井院長のもとでは、栄養管理士とともに専門家の立場から治療や助言を行っている。
インスリン注射以外の
選択肢が増えている
ちなみに、糖尿病の治療薬といえばインスリン注射が知られているが、新たな治療法があることをご存知だろうか? 例えば、膵臓からのインスリン分泌を促進する働きを持つ「インクレチン」の一種「GLP-1受動体作動薬」や「GLP-1/GIP受動体作動薬」の場合、腸の動きを抑えて体重増加が起こりにくくなる。また尿に糖を出すことで血糖を下げる飲み薬「SGLT2阻害薬」などもある。従来の薬は血糖値を下げる半面、血液中の糖分を体内に運び込むことによる体重増加がネックとなっていたため、これらは新たな救世主といえよう。
また近年では「糖尿病」という呼び方がネガティブな印象を与えるとして呼称を変更しようとの動きがある。罹患すると「生活習慣の乱れが原因では?」との捉え方をされることがあるためだ。しかし実際は、体質や遺伝など様々な要因によって起こりうる。「原因は人それぞれ。受診や治療を躊躇せず早めに受診して、各々の状態にあった治療法を選択することが重要です」と、土井院長は強調する。
これまでは罹患すると治療が続き不自由な生活を強いられるイメージだったが、治療薬の進化によって、状態に応じた治療法を選べるのは嬉しいことだ。人生百年といわれる時代、気になる点があれば早めに受診し、専門家による指導のもとで日々をバランス良くコントロールしながら、健康な人生を歩んでいきたい。