2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると予測される。認知症と診断された高齢者の6割が、アルツハイマー型といわれるが、今秋、新薬が登場して治療への期待が高まる。アルツハイマー型と的確に診断するための「PET(ペット)検査」とは!?
新薬「レカネマブ」を
使うか診断するには
2023年9月25日、アルツハイマー型認知症の新しい治療薬「レカネマブ」が、厚生労働省に正式に承認された。
要介護状態になる一番の原因は認知症ともいわれるが、左のグラフのように、65歳以上の認知症患者数は増えていく傾向にある。推計では2025年には少なくとも675万人、65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれる。糖尿病患者の有病率に伴って増えれば730万人。がん患者よりも認知症患者に税金が使われることになるかもしれない。そこで国は認知症患者の増加抑制を重視。新薬「レカネマブ」は、早ければ年内に投与される見込みだという。
日本では、認知症と診断された高齢者の6割が、アルツハイマー型といわれる。アルツハイマー型認知症になった人の脳内には「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまり、そのせいで神経細胞が壊れるため、脳が縮んで働きが低下すると考えられている。アルツハイマー型認知症になると、一般的にはもの忘れが目立ってくる。さらに理解力や判断力が衰え、体の機能も低下して自由に動かなくなるなど、しだいに様々な症状が出てくる。
しかも、がんの場合は本人が「痛い」などの自覚症状があるが、アルツハイマー型だと本人は気づきにくく、周りが「おかしい」と感じることが多い。独り暮らしの高齢者などは発見が遅れ、進行してしまう。今回承認された新薬は、患者の脳にたまるアミロイドβを取り除くことができ、症状の進行を抑えることが期待されている。
しかし認知症の症状が出ても、即アルツハイマー型だとは言えない。もしかすると脳出血や脳梗塞による記憶障害かもしれない。そこで「ものわすれ外来」などを受診し「アルツハイマー型です」と診断されたら、次はどの程度アミロイドβがたまっているのか検査する。そこで陽性であれば、高価な新薬の投与を検討する、という流れだ。
自分の脳にどのくらい
アミロイドβがあるか撮影
では、自分の脳にどれくらい異常なたんぱく質がたまっているのか。それを調べることができるのが、「アミロイドPET(ペット)検査」だ。身体への負担が少なく、がん検診でも使用されるPETカメラで、頭部のみを撮影する。
画像をご覧いただきたい。右側の2例は、正常な人の脳。左側の2例は、アミロイドβがたまっている人の脳(注1)だ。本来はモノクロの画像をわかりやすいようにカラーにしてあるが、放射線医学に実績のある医師にかかれば、このように識別できる。「アミロイドPET検査」を行うには、特別な検査薬を注射し、1時間30分ほど安静にした後、脳をPETカメラで撮影する。左のようにアミロイドβが多い場合、「アルツハイマー型認知症」と診断される。このPET検査を行っているのが、『魚住クリニック』だ。2023年10月時点ですでに検査薬を院内で製造できる認証を得ている。無菌状態の専門スタッフしか入室できないクリーンブースで検査薬を製造している。
「100歳の美しい脳」(DavidSnowdonn著)で紹介された研究報告では、75歳以上で天寿を全うした修道女の脳を調べたところ、脳が委縮しアルツハイマー型認知症の状態であるのにまったく認知症の症状が出なかった人が8%いたそうだ。どういう生活が認知症の発症を防げるのか、現在はまだ研究段階だ。しかし、規律の厳しい修道院では、早寝早起き、人の話など脳も体も使う生活であることは容易に想像がつく。
魚住院長は「アミロイドβがたまっているからと言って、即アルツハイマー型認知症になるとは限りません。しかしPET検査で得た質の高い情報を医療機関へ提供することで、無駄のない医療へ貢献しています」と語る。現代は、薬で認知症の進行をゆるやかにすることもできる。認知機能の衰えを感じたら、脳の健康チェックも重要ではないだろうか。
096-370-7111