日本人の2人に1人は一生のうち何らかのがんにかかるといわれている。医療の進歩により治療法の選択肢は広がってはいるが、熊本で独自の免疫療法でがん治療に取り組むクリニックに全国から注目が集まっている。
免疫力をアップさせて
がん細胞を攻撃
一般的にがん治療は、手術、抗がん薬、放射線療法の3つが標準治療といわれている。多くの病院ではこの標準治療が行われるが、がん難民をうみ出す現状がある。そんながん難民と呼ばれる人たちの受け皿となっているのが、合志市のアンビー熊本にある『くまもと免疫統合医療クリニック』の赤木純児理事長だ。免疫医療について長年研究を続けている赤木理事長は、多くの学術論文を発表するなど、国内でも有数の免疫医療の第一人者。
「がん細胞は健康な人の体でも毎日数千個発生するといわれています。通常は免疫細胞によって排除されますが、細胞の変異や免疫力が低下するとがん細胞は生き残って成長して、がんになってしまいます。つまり、免疫こそがん治療の主役であると考えています」と赤木理事長。
2018年にノーベル賞を受賞した本庶佑氏が発見したのはPD―1という免疫細胞にブレーキをかける分子。このPD―1のブレーキを外すために開発されたのが、オプジーボという薬だ。すでに多くの病院でがん治療薬として使用され、効果をあげている。このことからもがん治療に免疫が大きく作用することが示されている。赤木理事長はこのオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤、低用量の化学療法や水素ガス、ハイパーサーミアによる温熱療法など安全性と有効性の高い免疫療法を組み合わせた統合医療で、がん治療に取り組んでいる。
水素ガスを併用する
国内では希少な統合治療
「おそらくオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤などと水素ガスを併用して治療を進めている病院は全国でも稀だと思います」。
赤木理事長は早くから水素ガスに着目して研究し、その効果について書籍も多数出版している。「水素は細胞性免疫の中心的な役割を担うT細胞を強くすることが分かっているので、水素ガスを吸引してオプジーボなどを投与すると、効果が70%近く上がることが判明してきました」。
これまで当クリニックでは1000件近くの治療にあたっているが、そのうちステージ4の患者の7割が改善、あるいは進行が止まっている状態にあるという。さらに同クリニックで行う免疫療法の一つ、ハイパーサーミア(温熱療法)は、がん細胞が42度以上になると死滅することから人体に特殊な高周波をあて、患部のみの温度を上昇させて、がん細胞を攻撃する。このとき患部の周辺部も40度以上に加温され、免疫細胞も活性化してがん発生のリスクを抑えられる。ほかにも、光がん免疫療法や自家がんワクチン療法など、複数の免疫療法が用意されている。
「患者さんの病状や免疫状態は全て異なり、決して同じものはありません。当院では7つの免疫パラメータを使って、個人の免疫状態を把握してその動向を見ながら最適な治療をしていきます。個々に合ったオーダー医療に取り組んでいます」。
現在、日本には納得できるがん治療や療養生活を求めてさまよう、いわゆる〝がん難民〞と呼ばれる人が60万人以上いるといわれている。
標準治療で効果がなく治療が中断され、緩和ケアを勧められた人。あるいは抗がん剤治療の副作用がつらく続けられなかった人など、がん難民となった理由はさまざま。本当はまだ治療を続けたい、まだあきらめたくないのに、そう思いながら行き場を失った人たちは大勢いる。「標準治療を受けて効果がなかったとしても、免疫を上げる治療を行えば再び抗がん剤等の治療に効果がみられるようになった症例もたくさんあります。決してあきらめないで欲しいですね」と赤木理事長は最後に語った。
“がん難民”を救う新しいがん治療
未病治療、健康維持に
水素サロンをオープン
同院では、まだ症状のない未病の段階での治療や一般の方の健康維持に向けた水素サロンを2023年7月にオープンさせた。水素の効能は未知数で大きな可能性が秘められているが、さまざまな病気や老化を引き起こす悪玉活性酸素の働きを抑制し排除することが分かっており、病気の予防や治療として大いに期待されている。現在サロンに通っている人も、糖尿病、高血圧症、あるいはパーキンソン病、不眠症、不登校の子ども、アトピー性皮膚炎などさまざまな症状を抱えている。
サロンでの水素吸入は1時間ほどで、コーヒーなどを飲みながら水素吸入マシンで水素ガスをゆっくりと吸い込み、リラックスするだけ。マシンからは1分間に濃度約4・9%水素ガスが1200ml発生する。体内のすみずみまで水素が行き渡り、リラクゼーション効果も高く気分もリフレッシュできる。さらに美容効果やダイエット効果も期待されるとあって、若い女性にも人気が高い。もちろん、日頃から免疫を高めてがんや糖尿病、高血圧症などにかからないよう予防の観点から定期的に通う人もいる。
人間ドック・健康診断
がん検診のすすめ
同クリニックの免疫統合医療が大切にしているのは未病の段階での治療だ。そのためには、がん・脳卒中・心臓病等の生活習慣病に対する注意は早くから始めることが大切。これらの病気の早期発見と日頃の生活習慣を見直すために、検査項目を充実させ、検査後は日々の健康づくりに関してアドバイスしている。また個々の免疫状態を測定し、それに応じたアドバイスも行っている。
安心して治療に専念
家族と過ごせる宿泊施設
同クリニックに入院設備はなく、通院の治療となる。しかし県外からの患者も多いため、近くに1LDKマンションタイプの専用宿泊施設を用意している。部屋に水素ガス吸引マシンをレンタルすることも可能で、滞在中は好きな時間に利用可能。健康維持のため定期的に宿泊して水素ガスを吸引する人もいる。中には他県からの来院で1年に渡って専用施設を利用してがん治療に専念。見事に寛解した人もいる。また、家族も一緒に宿泊できる施設となってる。
医療法人 全健会 くまもと免疫統合医療クリニック
096-277-1205