CASE6 がん(化学療法)
がん(悪性腫瘍)治療は手術等によって根治を目指したいが、進行度によっては「いかに生活の質を維持しながら、がんと向き合うか」という姿勢も大切となる。ステージ4の化学療法に取り組む『熊本医療センター』の榮先生に話を聞いた。
QOLを重視した
がん治療・ケアを提供
医療機関におけるがん診療は、①手術、②放射線治療、③化学療法、④緩和ケアといった4つの柱から成り立つとされている。今回紹介する『熊本医療センター』の腫瘍内科で取り組んでいるのが、この③にあたる化学療法だ。抗がん剤治療を主としながら、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など最新の治療法を駆使し、主にステージ4に相当するがん患者の治療にあたっている。
ステージ4はがんが最初に発生した部位(原発巣)を超えて、離れた器官や臓器に転移をしている、進行した状態を指す。同科では、QOLを保ちながらできるだけ長くがんと共存し生活できることを目標に据えて治療に取り組む。「造血器腫瘍など化学療法で根治が望めるものは支持療法を駆使して強力な治療を行いますが、当科にかかる患者さんは根治が望めない方が多くを占めます。ですから、『残された時間をどう生活の質を維持しながら過ごすのか』という点を重視した緩和的化学療法がメインとなります。体力維持を目標にしながら、適宜薬を抜いたり、減量をしたりして副作用を抑えながら、患者様の生活イベントに合わせ臨機応変に対応しています。最近は免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになったことで、飛躍的に長く頑張れる方が増えてきました」と腫瘍内科部長の榮先生は話す。
免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞がリンパ球をはじめとした免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを解除する薬剤のこと。最新の治療では、この免疫チェックポイント阻害薬と抗がん剤などを組み合わせた複合免疫療法を導入しているという。「複合免疫療法を導入したことによって、副作用のあらわれ方も多種多様となりました。そうしたときに欠かせないのが、他の診療科の先生との密な連携です。例えば、免疫チェックポイント阻害薬の副作用によってホルモン異常を生じた方がいたら糖尿病・内分泌内科の先生と共同で治療にあたるなど、さまざまな連携が広がっています。こうした迅速な対応は、当科のほかに34診療科がある当院ならではだと思います」(榮先生)。
腫瘍内科は現在2人の医師が治療にあたっており、そのほかに緩和ケア専門の看護師、化学療法・放射線治療の認定看護師、理学療法士、心理師など多様な専門スタッフが患者さんに対応している。がん診療連携拠点病院として、個々の専門性を集結したチーム医療によって、最先端の医療を提供できるよう取り組んでいる。
096-353-6501