CASE1 三叉神経痛、顔面けいれん
脳の中の神経が血管の圧迫を受けることで、顔の片側に激しい痛みやけいれんを生じる疾患がある。命に関わる病気ではないものの、不快で日常生活に大きな支障をきたす。外科手術ができる施設は少ない中、『済生会熊本病院』で受けられる治療法などを聞いた。
自覚症状あれば脳神経外科へ
三叉神経痛は比較的高い確率で症状は改善
三叉神経は目、鼻、口の周辺など顔の感覚をつかさどっている脳神経。この三叉神経に、加齢などで曲がった脳血管が当たることで頬や顎の激痛を生じるのが三叉神経痛である。食事や歯磨き、洗面などをきっかけに、顔に発作性の電撃痛が起こる。よく知られた病気となったが、虫歯かと思って歯科医院に行く患者もいる。良くなったり悪くなったりを繰り返し、徐々に耐えられない痛みとなって病院に来る患者が多い。「三叉神経痛と言われたら、脳神経外科を受診してほしい」と山城先生は言う。
治療には、まずカルバマゼピンという薬を使う。「通常の痛みには効きませんが、三叉神経痛には劇的に効き、これで診断もつきます」と山城先生。ただし、眠気やふらつきなどの副作用が強いので「飲めない人には手術を勧めます」とのこと。
外科手術は微小血管減圧術(МVD)と呼ばれ、疾患がある側の耳の後ろを切開し、小開頭を行って、顕微鏡手術で神経を圧迫している血管を神経から引き離す。この手術で80〜90%の方の痛みが改善される。4時間程度の手術だが、細かな技量が必要な脳神経外科手術だ。
高齢の三叉神経痛には
ガンマナイフ治療
高齢者の三叉神経痛では、ガンマナイフ治療を行うこともある。ガンマナイフとは、放射線であるガンマ線のビームを病巣に当てて治療する放射線治療機器のこと。体にメスを入れずに治療できるため、高齢者でも体の負担なく治療が可能。『済生会熊本病院』では 80歳を基準とし、80歳以上にはガンマナイフ、80歳未満で手術が可能な体力がある人は手術を選択している。
顔面けいれんに薬は効果なし
手術で症状は改善
顔面けいれんは、片側の顔面がピクピクとひきつけを起こし、中年以降の女性に多い疾患。緊張することで症状が強くなる。けいれん中に痛みはなく、放置しても命にかかわるものではないが、不快なうえに、人目を避けて家に閉じこもりがちになる人が多い。ひどくなると片目が開けられなくなり、車の運転や読書に支障をきたすこともある。
顔面けいれんに効果がある内服薬はなく、ボツリヌス毒素注入療法(ボトックス療法)と手術による治療法がある。「脳の手術をためらう方には、美容外科でも使用されるボツリヌス毒素注入療法を紹介します」と山城先生。目の周りに打つだけで、3〜4カ月間けいれんを抑えることができる。
けいれんが頬(ほほ)や首など広い範囲に現れるなら、三叉神経痛と同じ微小血管減圧術(МVD)が適応となる。成功率は80%前後だが、手術後早期に症状が改善する。「合併症が出ないよう気をつかう手術ですが、完全にけいれんが消えると患者さんにとても喜ばれます」と山城先生は話している。
096-351-8000