「医療を通じたまちづくり」で地方創生へ
北館増設で利便性が向上、10月には産科も再開センターに指定
2013年、八代市の中心部に14階建ての新病棟(本館)を建設した独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)熊本総合病院。2023年3月には本館に隣接して北館もオープンした。さらに本館の改修・拡張を進める一方、同年10月には婦人科を産科婦人科に改めるなど、県南の拠点病院としての体制を整えつつある。同院の取り組みについて島田信也病院長に話を伺った。
〝ストック型〞まちづくりで
変わり始めた中心部
島田病院長は30歳代半ばに暮らした留学先のアメリカ・ワシントンDCを理想に、「病院を核とした〝ストック型〞まちづくり」(八代モデル)を進めてきた。
「JCHOが掲げる〝地域包括ケアの推進〞の実現には、高齢者が住み慣れた地域で安心して自立した生活を送れるように、医療や介護、福祉サービスを一体的に提供し、すべての世代で支え合うネットワークを形成するまちづくりが重要です」と島田病院長。そこで、病院をまちの基盤に据え、行政機関や公共施設、銀行、マンション、商店街などの周りに若いファミリー層が居住する文教地区、その郊外に会社や工場などを配置するまちづくりのモデルを提案してきた。事実、八代市中心部はマンション建設が進むなど、徐々にその姿を変えつつある。
スクラップ・アンド・ビルドが当たり前だった日本のまちづくりの発想も見直した。本館、北館の外壁を自然石で覆い建物の劣化を防止。内部は鉄骨構造にして改修・拡張が可能な造りにした。現在、本館は手狭だった外来部門、化学療法部門、手術センター、検査センター、医局などの改修・拡張工事を行っている。時代に対応した内部機能に生まれ変わりつつある。
モチベーションアップと
質の高い医療の提供へ
新たな北館は鉄骨構造の5階建て。本館と一体化したデザイン・色合いが美しい。内部には健康管理センターや内視鏡センター、腎センター、人工透析治療室などが移転したほか、大ホールや会議室などを備え、本館と合わせた建築面積は増築前の約1・8倍になった。島田病院長は「利用者の利便性の向上だけでなく、職員のモチベーションアップ、質の高い医療の提供にもつながっています」と話す。
建物や内部機能だけではない。2023年10月には婦人科を産科婦人科に改め、妊婦健診をスタートさせた。2024年4月からはハイリスク出産の取り扱いも視野に入れる。産科婦人科の医師も段階的に増員し、常勤医5〜6人で運用する体制を目指す。「熊本大学と連携しながら県南の人が安心して子どもを産める施設にしたい」と島田病院長は語る。
「医療を通じたまちづくり」を地方創生につなげ、人口増加や少子化阻止に寄与しようという同院の取り組みは、着実に進められている。
0965-32-7111