CASE5 総合診療(診療科不明の疾患)
受診すべき診療科が特定できない患者に対して診察・治療を行う総合診療医。地方の過疎化・高齢化を背景に、今もっとも必要とされる専門医ともいえる。そこで『熊本医療センター』辻先生に取り組みについて聞いた。
あらゆる患者の受け皿
となる総合診療科
「発熱や倦怠感などの症状はあるけれど、原因や対処法が分からない」など、病気の特定や対処が難しい疾患に悩んだことのある方は多いだろう。そうした症状に対応できる診療科があることをご存じだろうか。それが、総合診療医が診察・治療を行う総合診療科だ。2018年4月に開始した厚生労働省の臓器別専門医制度において、皮膚科や耳鼻咽喉科などに加え、19番目の基本領域の専門医として位置付けられた。領域別専門医は「深さ」が特徴であるのに対して、総合診療医は扱う疾患や問題の「広さと多様性」が特徴とされており、過疎が進む地方を中心とした地域医療への貢献も期待されている。
「専門にとらわれることなく総合的な見地から的確な診断と治療を行っています。専門治療が必要な場合はそれぞれの診療科へ紹介し、場合によっては各診療科と共同で診療しています。原因が不明な熱や全身倦怠、原因不明の体重減少などの症状や、複数の症状があって診療科を特定できずに困っている方を診療しています」と話す、辻先生。同診療科における令和4年度の新規外来患者数は573名。発熱、痛みを主訴とする患者がそれぞれのかかりつけ医から紹介されて来院することが多いという。なかでも、膠原病、感染症、不明熱の診療を得意としている。
総合診療科で扱う病気のなかで特徴的なものに「リウマチ性多発筋痛症」がある。首、肩、腕、太ももに痛みやこわばり、発熱をきたす病気で「ある日突然、両腕が肩から上に挙げられなくなった」というケースもある。「整形外科を受診して五十肩と診断されたものの、熱も痛みも引かないからと当院を受診される方もいます。診察の結果、膠原病の一種となれば、少量の副腎皮質ステロイドを服用することで筋肉痛が劇的に改善する場合が多いです。ただし糖尿病患者の場合、ステロイドの服用は注意が必要となるため、糖尿病内科の先生と相談しながら患者の治療を行っていきます」(辻先生)。
同院は日本専門医機構専門医制度における総合診療領域専門プログラムを有しており、総合診療専門医や病院総合医などの育成にも力を入れている。「熊本市だけでみても、専門医はたくさんいますが、総合診療医はまだまだ少ないのが現状です。育成にも力を入れながら、あらゆる患者の受け皿となるような診療科として柔軟に治療に対応していきます」
096-353-6501