アスリートの今と未来を支える
スポーツ医療の最前線
スポーツ医療に特化した『熊本回生会病院』のスポーツメディカルセンター(SMC)。同センターを統括し、県内外問わず多くのプロアスリートから信頼を集めるのが、整形外科医の鬼木先生だ。今年4月に同院の院長に就任してからも、スポーツ医療の発展のために多角的なアプローチを続ける鬼木先生と同センターの取り組みについて話をうかがった。
スポーツ医療に貢献
東京五輪でも活躍
スポーツに特化した医療に取り組む『熊本回生会病院』のスポーツメディカルセンター(SMC)。2015年の開設以降、熊本初の施設として学生からプロアスリートまで毎年延べ6000人弱の幅広い年齢層の患者の診療に対応している。ケガの治療にとどまらず、予防やパフォーマンスの向上までを見据えた治療を行っているのが特徴だ。膝前十字靭帯再建術や人工関節置換術といった高度な手術に対応しているほか、米国メジャーリーガーの治療で注目を集めたPRP(自己多血小板血漿)療法を県内でいち早く導入するなど、先進的な医療にも取り組む。
このセンターを率いるのが、同院の院長でもある鬼木泰成先生。靭帯・軟骨の手術を数多く手がける整形外科医で、その症例数や実績は県内屈指。プロバスケットボールチーム「熊本ヴォルターズ」のチームドクターとしても活動し、メディカル面からチームを全面的にサポートしている。加えて、自身の研究成果を国内外の学会で発表するほか、米国のスポーツメーカーと共同で野球をはじめとしたオーバーヘッドスポーツで使用されるギアの開発にも携わるなど、あらゆる面でスポーツ医療の発展に積極的に取り組む。
2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村総合診療所の整形外科医師として活躍。IOC所属の医師を除き、九州から招聘された医師は鬼木先生を含めて2名のみという精鋭メンバーで、トップスポーツ選手の治療に臨んだ。
同院からアスリートを
育てる仕組みづくりを
日々進化を続ける、さまざまな分野のトップアスリートたち。進化を支えるのは、練習方法の多様化と最適化だといわれているが、それに伴い新たなケガも増えつつあるという。「水泳選手が陸上トレーニングに力を入れるようになって、膝十字靭帯をケガするようなケースも増えてきています。練習内容が多様化するほど新しいケガも増えていくので、スポーツ医療も常に進化を続ける必要があります。治療法は充実していますが、ケガの予防法や原因の改善に関しては、業界全体でまだまだ。選手本人や家族への指導も含めて、予防・再発防止に向けてスタッフ一丸となって取り組んでいます」と鬼木先生は語る。
鬼木先生が力を入れているのは、スポーツ医療だけにとどまらない。関東の大学にあるスポーツ学部と連携し、アスリートを育てる仕組みづくりも始めた。「高校からだけでなく、当院が関わった子供たちが大学のスポーツ学部に進めるような道筋を作りたいと思っています。アスリートとしてだけでなく、子供たちの引退後を見据えて、セカンドキャリアの礎となるような指導者としての勉強を、大学と一緒にサポートしていきたいです」。
096-237-1133