CASE05 変形性膝関節症
1982年から人工関節置換術を実施し、現在は毎年約600例近くの症例数があるという『熊本機能病院』。
その高い実績を誇る同院の副院長で、人工関節センター長でもある髙橋知幹先生に、新しい技術を導入した治療法を聞いた。
多くは50歳以上から
自覚症状が軽度の場合は保存療法
変形性膝関節症は、加齢などによって膝軟骨がすり減ることで、痛みなどの症状が現れる病気だ。膝の内側に負担がかかるO脚や肥満体型の方、筋力低下の影響もあり50歳以上の女性の患者数が多い事も特徴的。膝の外傷に起因するケースもある。膝関節内に慢性炎症や骨の変形が生じて、痛みが起こる。
日常生活で、歩き始め、椅子からの立ち上がり、正座ができない、階段の昇りがつらい、膝が曲げ伸ばしにくい、といったことで気づく方が多いというが、症状が軽度なら運動療法や内服薬、注射といった保存療法へ。保存療法での改善が見られない場合や、症状が強く日常生活に支障がある場合、手術適応となる。

的確な手術と患者の生活に
合わせたリハビリ
安全で的確なロボット支援下の人工関節置換術は1900件越え
熊本機能病院は、県内でも先駆けとなる人工関節手術支援のロボット「Mako(メイコー)」を2020年1月に導入。2024年9月までで、ロボット支援下人工関節置換術の実績は1900件を超えた。
「人工関節置換術では設置する角度と位置を正確にすること。筋肉などの軟部組織のバランスをいい状態にすることが最も重要になります。メイコーは、医師が骨を削ったり、人工関節を設置する際に、ロボティックアームでサポートします。万一、事前にインプットした術前計画にない動作をした場合、自動停止する仕組みになっています」と、髙橋先生。また、メイコーを使用することにより、関節の周囲にある軟部組織を温存する低侵襲な手術となり、術後の痛みも軽減が期待されるという。




術後はリハビリが重要。
不便を感じたら気軽に受診を
「人工関節置換術後は膝の機能回復のためにリハビリが非常に大切です」と、髙橋先生は話す。しっかりとリハビリをしないと、機能が回復しないだけでなく、痛みの改善や
日常生活動作の回復も難しくなるのだという。
同院のリハビリは、膝の筋力トレーニングや膝関節の可動域訓練はもとより、患者の生活環境に合わせて、和室や階段でリハビリを行うなど、安心して日常生活に戻れることを目指すことが大きな特徴となっている。患者の中には、「これぐらいの痛みなら」と我慢を続け、受診時にはかなり重症化しているケースも多いそうだ。髙橋先生は、「日常生活で少しでも不便を感じたら、気軽に受診していただきたいですね。症状が進むと変形が進み、痛みが強くなります。そうなると、歩くのが億劫になり、さらに筋力の低下を招きます。患者さんご自身で、症状を理解していただき、痛みにどう対処するか。患者さんに寄り添った治療に取り組んでいきたい」と語る。



社会医療法人 寿量会 熊本機能病院

