整形外科の領域を牽引し、新たな選択肢を広げる医療施設
専門性の高い技術で地域医療を牽引してきた『成尾整形外科病院』。常に新規性の高い治療を取り入れ、医療提供
体制も年々進展。幅広い疾患に対応、医療スタッフの充実など内外ともに刷新を図り続ける施設を訪ねた。
患者の要望に
応える一貫体制
開院以来、脊椎外科分野における高水準な医療を提供する同院。約半世紀に亘る実績で地域の信頼は厚い。同病院では、脊椎外科分野に加え、関節外科分野にも注力しており、両分野において県内でも先駆けて新たな治療法を取り入れている。さらに、骨折やスポーツによる怪我、骨粗しょう症、リウマチ治療など、多岐にわたる疾患に対応可能。高い専門知識と豊富な経験・技術を有する医師、看護師、理学療法士をはじめとする医療専門スタッフが多数在籍し、外来診療から手術、入院、看護、リハビリテーションまで、患者様一人ひとりに合わせた一貫した医療を提供できるよう体制を整えている。患者様それぞれの症状や所見を踏まえて、保存療法や身体への負担が少ない低侵襲手術なども含め、最適な治療方針を決定し、早期の社会復帰を一体となり支援している。
めざすのは「質の高い医療の提供」。毎年4月には職員総会が行われ、同じ目標を向いて行動できるよう今後の方針、将来のビジョンが共有される。成尾理事長は、「ソフト・ハード両面を整え、〝より安心、より安全な医療〞に向かって前進しています。先進的な医療を常に追求するとともに、従来のブラッシュアップに努め、多方面で貢献を図っていきたいと思っています」と語る。2022年4月〜23年3月の同院の手術件数は、脊椎関連が845件、関節が120件、その他の手術も合わせて1204件に上る。「近年、治療効果が高く、体へのダメージや体力的な負担を軽減できる治療の選択肢を広げてきました。同時に、入院患者の早期の社会復帰に向け、新たな技術を取り入れて治療に当たっています」と理事長。『誠療会』では今年4月、新たに『熊本そけいヘルニア・整形外科クリニック』を開院。新たな分野においても、専門性を生かした質の高い医療提供をめざすという。


腰椎椎間板ヘルニア
「腰や膝に痛みを抱えているけれど、やり過ごしていらっしゃる方も多いと聞きます。〝これくらい〞と我慢してしまう気持ちの中には、治療への不安もあるようです」と理事長。こうした日常生活に大きく関わる脊椎や膝関節について、従来であれば大がかりな手術が行われてきたが、近年、患者の体への負担の少ない治療法が開発されているという。
「たとえば椎間板ヘルニアの治療においては、薬や神経ブロックが主流で、改善しない場合、内視鏡や顕微鏡を使った手術に移行するケースが大半でした。こうした中、2020年から当院で行っているのが、新薬を使った『椎間板内酵素注入療法』(保険適応)です」。この治療法は、保存療法と手術療法の中間に位置するもので、保存療法では症状が改善されず、それでも手術に踏み切れないといった患者に推奨されるそうだ。治療は15分ほどで終了し、様子を見るために一日の入院が必要となる。

腰部脊柱管狭窄症
「腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の中の神経の通り道である脊柱管が加齢と共に狭くなり、神経を圧迫するために起こる病気です。下肢の痛みやしびれにより歩行が困難になるケースもあります。歩いていると足が痛くなったりしびれたりするけれど、前かがみになったり、しばらく休んだりしていると、また歩けるようになる〝間欠跛行(かんけつはこう)〞と呼ばれる症状が特徴的です。10分以上連続歩行できない場合は専門医の診断を受けることをお勧めします」と藤本院長。
患者の体の動きや痛みの範囲などを観察し、レントゲンやCT、MRIなどの画像診断と照らし合わせ、痛みの原因を見極めるという。治療法としては、血管を広げ神経への血流を良くする薬、神経の炎症を和らげる薬を内服。そのほか、温熱療法や神経ブロックなどの保存的治療が基本になるそうだ。専門的治療にあたる院長は、「保存的治療を2〜3カ月続けても患者さんの症状に改善が見られず、日常生活に支障があるような場合は手術を検討することになります」。
選択肢として、内視鏡や顕微鏡による患者に負担の少ない手術がある。脊柱内視鏡手術は、神経周囲の余分な骨を削り、分厚くなった靱帯を切除します。これにより、神経の通り道が広くなり、痛みやしびれを軽減させる。内視鏡手術は、筋肉などを傷めることが少なく、回復が早いため、高齢者でも安心して受けられるそうだ。術後に痛み止めの座薬を使用せず乗り切れる、炎症反応が少なく発熱しにくいといったメリットもあり、体力的負担の軽減につながる点にも注目したい。
また、術後はストレッチや筋力増加のための指導として、手術翌日からリハビリをスタート。医師と理学療法士などリハビリチームが一丸となって連携し、患者の社会復帰を支援していく。「しかし、手術はあくまでも最終手段です。同じ症状でも患者さん一人ひとり生活環境が違いますし、痛みにどう対処していきたいかといった思いも異なります。〝もう一度自分の足で歩きたい〞という患者さんの思いに寄り添った、よりよい治療を一緒に進めていきたい思っています」と院長は結んだ。


骨粗しょう症性
椎体骨折
「椎体骨折とは、骨粗しょう症が原因で、背骨の椎体と呼ばれる部分が押しつぶされるように変形してしまう状態を指します。たとえば、咳をしただけで骨折してしまうという方もいらっしゃいます」と話すのは脊椎脊髄外科の田畑先生。そして、「気づかぬうちに骨折していることから、〝いつの間にか骨折〞とも言われています」。
寝返りや寝た状態から起き上がるタイミングで、痛みを感じることが多い。ただ、時間がたって痛みが緩和されることもあり、治療を先送りにしてしまう傾向があるそうだ。「後々不具合にならないよう注意する必要のある疾患です」と先生は話す。「椎体骨折の治療は、体への負担の少ないBKP(経皮的椎体形成術)が有効です。これは〝切る〞手術ではありません。背中から椎体に細い管を通し、管を介してバルーンを入れて膨らませ医療用のセメントを注入。椎体を元の形に修復し、バルーンを除去します」と田畑先生は説明する。〝切る〞という恐怖心が取り除けると聞くと、前向きに検討したい選択肢の一つになりそうだ。

エコーで膝の神経をターゲットにした疼痛治療の様子

消炎鎮痛剤や湿布剤などの保存的療法で効果が見られず、手術に移行する前の段階として「末梢神経ラジオ波焼灼療法」を検討する
変形性膝関節症
膝の内側に違和感を感じたり、痛みを覚えたり、痛みの感覚はそれぞれだが、膝の痛みで来院される患者の大半に、変形性膝関節症の症状が見られるという。関節外科部長の林田先生は、「症状が進行すると、正座ができなくなる、階段の上り下りが難しくなるなど日常生活に支障がでてきます。さらに悪化すると、安静にしても痛んだり、膝の変形が生じたりします。患者さんは60代以降で、女性の方が多いという特徴も見られます」と話す。閉経後のホルモンバランスの変化により骨密度の低下なども起因している。
従来の保存的療法と手術の中間的治療として注目されているのが、〝末梢神経ラジオ波焼灼療法〞。2023年6月から保険適用となり、同院は2024年9月にこの治療法を導入している。具体的には、痛みを感じる膝の3つの神経に細い電力針を刺し、ラジオ波を流して熱を発生させる。神経を変性させて痛みをコントロールするというもの。治療時間は30分以内。翌日から、患者に適応したリハビリでサポートしてくれるのも心強い。


医療法人社団 誠療会 成尾整形外科病院

