熊本市北区 鶴羽田3-1−53
コミュニティホスピタルの旗を掲げ
住民の生活に伴走し、総合診療を提供
「ここがあるから安心」
地域住民のより所になる
超高齢社会となる中、医療においては疾患の治療だけでなく、リハビリや栄養療法、介護サービスとの連携が求められるなど、医療のニーズが質・量共に変化している。変わりゆく今を前に注目されるのが〝コミュニティホスピタル〞。『菊南病院』は2025年秋「一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会」と提携し、他に先駆けてコミュニティホスピタルを実践している。急性期病院とは異なる役割を担って、急性期以外の医療・リハビリ・栄養・介護まで診る。つまり外来から病棟、施設、自宅、いつでもどこでもワンストップで医療提供を行うというものである。
「当院はクリニックでもない大病院でもない、地域の住民を支える中核病院です。コミュニティホスピタルとして患者さんの人生に寄り添い、『治し、支える医療』を目指します。医療従事者が地域の方々の元へ出向き、人生を一緒に伴走していこうという思いです」と室原良治院長は力を込める。1972年開院以来、地域のかかりつけ医であり続ける同院のモットーは〝3つのS 相談・即入院・紹介〞。「患者さんの気持ちに寄り添い、耳を傾け、必要であれば入院対応。また、半世紀を超える実績から適切な医療機関をスピーディーに紹介する医療機関連携も確立しています」。
創始者から受け継ぐ志
医療連携の起点となる
院長の父で、医療法人室原会の創始者である故・室原亥十二先生が医療の道に進んだのが戦後しばらくして。百歳まで現役医師を務めたその姿が、今日までの院長を導く。「その当時の多くがそうであったように、父一人で成人から子どもまで診療していました。夜に往診したり、家族と外食する時は食事先の電話番号を伝えておいたり。父が実践していた医療は、まさにコミュニティホスピタルの精神に通じます」と院長は語る。
同院のある鶴羽田地域は温泉が湧き、その温泉とリハビリテーションを融合した画期的なケアを熊本で初めて導入。厚生労働省が推進する「こころとからだの健康づくり」を受けて、1992年(平成4年)からは訪問診療もスタート。また講話・体操・茶話会をセットにした〝活き活き健康教室〞を毎月開催するなど、医療に関する活動だけでなく、医療以外の交流にも注力している。
「高齢の患者さんは、日常生活において介助が必要なケースが少なくありません。入院中はもちろん、退院後も関連施設をとおして、訪問・通所リハビリテーションを継続的に提供できることが当院の強みです」と院長。同院はコミュニティホスピタルの魁として、総合診療の側面から診ると同時に、専門的な治療が必要な場合、更には退院後の患者の生活をサポートする場面で、多様な医療機関との連携の起点となる役割を担っているといえそうだ。
離島医療を経て視えてくる
3世代の医師が繋ぐものとは
Dr.コトーの風を受けて
限りない可能性を試す
コミュニティホスピタルの役割の一つに、総合診療専門医の育成がある。「これからは地域で持続的に医療を提供するには、人材の育成が必須でしょう」と話すのは、室原誉伶先生である。総合診療医である先生は、『菊南病院』と鹿児島県の下甑( しもこしき)島の診療所を兼任して、本土医療と離島医療に携わってきたスーパードクターである。ドラマや映画で知る人も多いD r .コトーのモデルになった医師が勤務していた下甑島の『手打診療所』。その医師が高齢で退所することとなり、後継者の一人だったのが誉伶先生。「鹿児島本土からフェリーで西に約1時間半、人口約1700人あまりの美しい島ですよ」と誉伶先生の頬が緩む。
2013 年のへき地医療現況調査によると、全国のへき地診療所1038施設のうち、常勤医師がいる施設は約半数の572 施設。606 施設は他の医療機関から派遣される非常勤医師が診療。どちらの医師もいない施設が1 0施設というのが現状。「初期臨床研修病院は東京でしたが、総合診療や地域医療に興味を抱き、その後ゲネプロ( ※へき地医療の担い手をサポートする運営会社)に参加し、長崎・上五島、モンゴル国オルネ県エルデネト、島根・隠岐島前、そして下甑島と通算1 0年あまり離島医療に携わってきました。本土医療と異なるのは専門分野だけでなく、〝すべて診る〞ことに尽きます。全部やらないといけないという状況下、必然的に総合診療の能力が高まります」。
変貌する今!さらに
患者のニーズに耳を傾ける
6年在勤した同診療所に後任医師が見つかり、時を同じくしたころ菊南病院の転換期と感じ、誉伶先生は戻る意思を固めた。「この4年間2拠点を行き来して、島では各地区への出張診療の意義を、熊本では訪問診療に関わりながら、住民参加の〝きくなんフェスタ〞を企画運営しました。医療以外での様々な交流の必要性を実感しています」と強調する。
創始者、院長、そして若きドクター、3世代それぞれのスタイルで常に時代を先駆けながらも、コミュニティホスピタルの精神が脈打っている印象を受ける。経験豊富な総合診療ができることは、高齢者診療の重要性が増していく現代の医療機関として、大きな強みになるに違いない。院長は締めくくるように、「患者さんは家族と離れ入院するだけで、心理的・身体的に落ち込んでしまいます。自宅で治療できるなら最善ではないでしょうか。点滴や輸血、レントゲンなど、在宅でできる治療はたくさんあります。住み慣れた家で家族に看取られ最期を迎える、その有り様は日本人の心に馴染むのだと思っています」と語った。
昭和・平成・令和、3世代の変わらぬ信条と進化する医療が鮮明に見えた。〝機能強化型在宅療養支援病院〞にも承認されている同院。24時間在宅医療を支える対応として、訪問診療においては、定期的な医師の診療・尿検査や血液検査・在宅酸素療法などを行っている。また、訪問リハビリテーションでは、医師の指示により、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が患者の自宅に訪問。日常生活動作などの獲得・福祉用具や住宅改修の導入と使用などのアドバイス・健康維持管理の指導と、日常生活すべてにおいて細やかに対応している。
