The Third Decadeに突入
2040年を見据え、選ばれ続ける“質の高い医療”を
創立20周年を経て、桜十字病院は2026年、第3の10年「The Third Decade」の幕を開けた。目前に迫る2040年問題。人口減少社会という荒波の中目指すのは、地域に選ばれ、信頼され続ける場所であること。630床の規模を活かし、一人ひとりの「生きるを満たす。」ために、医療の質を磨き続ける。
再発を防ぐための
「心リハ」の役割
日本では、高齢化に伴い心臓病、中でも心不全患者は増加傾向にある。特に心不全は慢性疾患として進行し、再発のリスクもある。そこで必要となるものが、心臓リハビリテーション(心リハ)。心臓に病気を抱える人が、安心して快適な家庭生活を送り、社会生活へスムーズに復帰することを目指した総合的なプログラムだ。実際、心不全患者を対象とした調査では、心リハを受けた人と、受けなかった人の生存率には大きな差があることが示されている。適切なリハビリを続けることは、再発や重症化の予防となる。また心リハは、「機能回復のための運動的側面」のみならず、「教育的側面」があるのが特徴だ。今後再発しないような意識づくりも重要な要素としている。
回復の歩みを確かなものに
運動も教育的側面も重視
同院では2025年6月、新たに心臓リハビリをおこなう部門リハビートを立ち上げた。リハビートとは「リハビリテーション」と「ビート(beat=鼓動・リズム)」をかけ合わせた造語。「回復の歩みを心地よいビートで支える」といった思いが込められている。患者のQOL向上や再発防止に加え、高齢患者のフレイル(心身の衰え)の予防が大きな目的だ。年齡を問わず、急性心筋梗塞や狭心症、慢性心不全、心臓手術後の患者などを対象とし、150日間は保険適用で受けられる。患者一人ひとりの状態・医師の診断によってその日のリハビリの内容は異なる。可能であれば、心肺運動負荷試験(CPX)をおこない、現状の運動負荷に対する心肺の働きをチェック。結果に応じて心臓に負担をかけすぎない、安全な範囲での運動プログラムを作成している。さらに、心疾患の再発予防に向けた教育的側面も重要。理学療法士や薬剤師、栄養士など各分野の専門スタッフが薬や食事、生活習慣の相談に応じる。その際、「指導」といった形ではなく、患者の要望を聞き取りながら最善のアドバイスができるよう心がけているという。
患者の日常を支える心臓リハビリ「Rehabeat」の新設
多職種のチーム医療で
再発予防を目指す
リハビートの大きな特長は、医師を中心とした専門的サポートだ。循環器内科医が3人、心リハ指導士7人が在籍。心リハをおこなう体制が慢性期病院としては県内トップレベルに充実しており、安心して専門性の高いサポートを受けられる。また多職種のチーム医療であることにも注目したい。先に挙げた循環器内科医と心リハ指導士に加え、看護師や理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、社会福祉士、薬剤師、栄養士、臨床工学技士といったさまざまな専門スタッフが連携。患者の疑問や不安を多職種の専門スタッフが協同で最適解を提供できる体制づくりをおこなっている。
さらに、入院のみならず外来での両面のフォローができるのも特長の一つ。入院中は、退院後の安心した家庭生活のための前期回復期、社会生活や趣味活動の再開を目指す後期回復期に合わせたリハビリに取り組む。退院後は外来リハビリとして再発防止と快適生活の継続を目標とした維持期のリハビリ実施を継続的にフォロー。多方面からの再発予防を目指している。加えて外来リハでは、将来的に他医療機関からの紹介受け入れも想定している。近隣医療機関と協力し、手術・退院後の心リハにつなげることで、地域医療における切れ目ないサポートを実現する狙いだ。また、心臓への負荷を確かめるCPX機器のうち、高齢者も少ない負担で検査ができるリカンベント型エルゴメーターを導入していることから、検査だけの紹介も受け付けている。
本人の価値観を尊重
心リハにおける緩和ケア
心リハでは緩和ケアの視点も求められる。一般的に緩和ケアはがんに関するものがほとんどだが、同院では心不全や慢性呼吸器疾患といった非がん患者への緩和ケアにも力を入れている。中でも重要視しているのはACP(アドバンス・ケア・プランニング)だ。もしもの時に、人生の最終段階で受ける医療やケアについて、本人と家族、医療従事者が事前に話し合う取り組みのことを指す。厚労省によって〝人生会議〞とネーミングされ、全国的にも普及啓発活動がおこなわれている。同院では、患者が前向きに生きるための価値観を聞き取り、スタッフ全員で情報を共有、対策を検討。患者本人に「トイレは自分で行きたい」といった希望があれば、そこを目標とした運動プログラムを提案。仮に病気が進行し、そのプログラムが難しくなった場合には、「次はどこまでを目標とするか」といった話し合いを経て、次の提案をおこなう。無理をして100%の治療・プログラムを断行するのではなく、患者と家族の考えに寄り添った支援を続けていく。
患者の心に寄り添う
心と体の居場所に
心不全を抱える人のうち、22%がうつになるといった報告もあり、心リハでは精神的なサポートも忘れてはならない。「だからこそ、心リハが患者さんにとって、ちょっと行ってくる、というような気軽な心と体の居場所になるのが理想です」とリハビート統括医である伊藤先生は語る。そのためには運動プログラムの実施や生活習慣のアドバイスといった医療スタッフからのアプローチに加え、同じ病気を経験した患者との関わりも非常に重要となる。共に心リハに通う人と顔なじみになり、気持ちを分かち合い、共有することで「また行こう」、「あの人と話したい」といった意欲を生み、その結果がQOLの向上につながる。楽しく前向きに通うことができる場所を目標とするリハビート。心疾患を経験した患者の心に寄り添い、支え続ける存在としてその役割に期待したい。
自由と尊厳を守る桜十字の緩和ケア
安らかな最期を
迎える場所を提供
がん緩和ケアは、がん患者本人や家族の身体的、精神的、社会的なつらさを和らげ、QOL(生活の質)を向上させるアプローチのこと。医師をはじめ、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリをおこなうセラピスト、介護士、社会福祉士やケアマネージャーなど地域連携のプロがチームとなって、医療機関や自宅で生活をサポートする。痛みの改善や日常生活のケアに加え、精神的なケア、家族へのサポートなど幅広くおこなう。もしがんと診断された場合は、「どのように生きていきたいか」について、本人を含め周りの人と共に考えることが重要だ。好きな物や、やりたいこと、忘れられない思い出などを記入する「私の願い」というシートを用意して、スタッフ全員で共有・尊重し、安らかな最期を迎えるために、共に考え、サポートしていく。
多職種のチーム医療で
患者の願いに応える
同院のがん緩和ケアでは「3つの今を叶えるケア」を掲げている。ひとつは「今、会いたい」を叶える。通常、対応が難しいとされている、時間・人数に制限をつけない面会体制を積極的に導入。各部屋にはソファベッドを設置するなど、家族の付き添いにも柔軟に対応している。さらに、同院内には〝病院は大切なものに気づける場所〞をテーマとした「まってるラウンジ」もあり、「今、会いたい」という願いを全力で叶えている。2つめが「今、やりたい」を叶える。患者の思いに最大限応え、後悔のない選択を支えている。例えば、合唱団で活動をしていた87歳女性患者の「あの頃のようにもう一度歌いたい」という願い。病棟内でのコンサートを開き、家族やスタッフが見守る中、衣装を身にまとった患者がいきいきと歌を披露。本人の思いに応えた。また、「息子が乗る船をもう一度見たい」という想いを持っていた68歳の患者。その想いに寄り添い、船を近くの三角港まで接岸してもらうことに。三角港までは福祉タクシーを活用し、港から船を見てもらい、患者の想いを叶えた。このように、希望は最大限に応えるのが同院の方針だ。そこで必要なのはチーム体制。音楽の演奏では音楽療法士、外出する際には地域の福祉に詳しいソーシャルワーカーに相談するなど、院内外の多職種が一体となって患者の願いを叶える。
3つめは「今、食べたい」を叶える。病棟には食事がままならない患者も少なくない。一口だけでも、見るだけでも、食を楽しんでほしいといった思いから、昼夜で「ひとさら」メニューから選べる個別対応を実施。飲み込むのは難しいが「お寿司が食べたい」といった要望には、マグロを舌にのせて味わってもらうといったエピソードもあるという。緩和ケアの吉本先生は「死は悲しいことではあるけれど、不幸なことではありません」と語る。「できるだけ長く生きてほしい」という家族の願いが、逆に本人の苦しみにつながることもある。家族と話し合いを重ね、本人が最期の瞬間に「生きていて良かった」と感じられるケアにチームで取り組む。
「家族と過ごしたい」
思いに応える外来の設置
同院の緩和ケアでは、がん療養中の患者を対象に外来も受け付けている。体の痛みやだるさ、吐き気や食欲不振に対し、症状緩和の薬剤を処方することが可能。「まだ入院するほどではないが、どんな施設か見てみたい」「今後の緩和ケアの活用法について相談したい」といった相談に無料で対応している(要予約)。入院前の段階として外来を活用し、体力が落ちて来た段階で入院するといったケースも多いという。また、入院している患者の一時退院時のケアとしても外来を活用することができる。この根本にも、「できるだけ家族と過ごしたい」といった患者の気持ちに寄り添う姿勢が表れている。
骨粗しょう症予防へ 整形外科を注力
QOL向上のために
欠かせない「骨」対策
骨がもろくなり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる状態が「骨粗しょう症」だ。日本整形外科学会の報告によると、高齢者に多く見られる脊椎(背骨)の圧迫骨折件数は日本全国で年間約420万件。うち4分の3は単なる腰痛と思い込み、受診しないこともある。ここからいわゆる「ドミノ骨折」の発生、寝たきり状態などの悪循環に陥る。大腿骨頸部の骨折後の5年生存率は5割というデータもある。将来、楽しみながら長く生きるためには、骨粗しょう症の対策は欠かせない。生活習慣病と同じく早めの対策を心がけることが重要だ。
骨塩定量検査を導入
今後力を入れる分野に
同院の整形外科外来では骨粗しょう症予防を重要なテーマと位置づけ、力を入れている。現状のリスク把握のため「骨塩定量検査」を導入。特に骨粗しょう症にかかりやすいとされる閉経後の女性は、1年ごとの定期的な検診をお勧めしたい。もちろん、食生活の見直しや、運動量を増やす、身の回りの段差を少なくするといった対策も有効だ。また、万が一骨粗しょう症と診断された場合には、飲み薬や注射といった治療がおこなわれる。そして、治療は継続する必要があるため、詳しく説明を受けたうえで、かかりつけ医に相談しながら治療法を選択してほしい。齢を重ねると、徐々に骨はもろくなる。その変化をできるだけ穏やかにするための、予防を意識した生活を送りたい。
医療法人 桜十字 桜十字病院
