地域の医療充実を担い、ニーズに応える医療体制を構築
八代北部地域の医療拠点として活動する『八代北部地域医療センター』。県内では初となる『そけいヘルニアセンター』の開設を始め、地域で手薄となっていた婦人科外来の開設、2026年の春からは整形外科の拡充を図り、より専門的な手術にも着手する。ますます、地域医療の充実に力を注ぐ同センターの“今”について吉田光宏院長に聞いた。
地域の手薄な医療を補う
強化する専門医療の整備
2000年の立ち上げから、より専門性と質の高い医療提供を目指してきた『八代北部地域医療センター』。急性期から回復期リハビリ、緩和医療、在宅医療と、地域のニーズに応える医療体制を整備している。「2026年の春からは新たに整形外科に専門医を迎える予定です。特に関節外科の充実を図り、関節鏡検査や手術を行っていきます」と吉田院長。例にもれず八代地域も高齢化が進み、膝関節に関する治療や手術を必要とする人が増えている。その治療に適切に対応するため、膝関節治療において経験豊富な専門医を在籍させるという。さらに八代北部地域では初となる婦人科外来を2024年から開設。女性医師が担当し、月2回の診療で検診や更年期障害などにも対応している。
回復期病棟はないものの、地域のニーズが高いリハビリテーションが充実している点も注目したい。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職が、運動器や脳卒中、嚥下や廃用症候群、呼吸器、がんなど、症状に合わせた専門性の高いリハビリを提供している。回復期病院同様の設備環境でリハビリ臨床認定医が在籍し、急性期からの一貫した回復期のリハビリを担っている。糖尿病や脂質異常症と共に、生活習慣が要因となる代謝性脂肪肝の対策にも取り組んでおり、最新の超音波検査で脂肪肝の程度や肝臓の硬さを数値化し患者にグラフで示すことで、生活習慣の改善や治療にも役立てている。体水分量や筋肉量、脂肪量などを測定する機器も設置し、壮年期から高齢者の健康づくりやフレイル対策にも活用している。
在宅医療サポートセンター
へき地医療拠点病院も
在宅医療にも力を注ぎ『八代地域在宅医療北部サポートセンター』を開設し、在宅医療を安心して受けて頂く取り組みを行っている。特に小児の在宅医療に対しても希少な訪問診療を行っており、必要とする子どもや家族にとってはありがたい存在。また、緩和ケアを在宅で希望する患者にも訪問診療を行う。住み慣れた家で自分らしく最期を迎えたいという願いをかなえるため、終末期における医療やケアを緩和ケアの専門チームがサポートしている。さらに在宅医療の提供だけでなく、他の医療機関や訪問看護ステーションなどへの研修会や勉強会なども開催する。地域医療の拠点病院として、在宅医療の質の向上にも尽力しているのだ。もちろん行政や介護・福祉施設とも連携を深めながら、地域包括ケアシステムを牽引していく。
開設以来、地域に根差し医療の充実を推し進めている同センター。2024年からは「へき地医療拠点病院指定」となり、活動領域はますます広がるばかり。「遠くは宮崎県の県境に近い椎原診療所まで、車で1時間半程かけて行きます。患者さんは医者が来るのを待っていらっしゃいますから、1分でも早くという思いで向かいますよ」と話す院長の目は優しい。
小児から高齢者まで高まるニーズ
「そけいヘルニアセンター」
県内外から患者が足を運ぶ
負担の少ない手術法を提供
もう一つ特筆したいのは県内で先駆けて、2007年に「そけいヘルニアセンター」を開設している点。開院当時より小児から成人のそけいヘルニア、へそヘルニア、小児の停留精巣などの手術を行っており、並んで県南では希少な小児外科も開設している。そけいヘルニアとは脚のつけ根に近いお腹(そけい部)の腹壁の穴から、臓器や脂肪が壁の外に出る疾患のこと。そけいヘルニアは子どもに多く、特に乳幼児に発症する傾向にある。成人では中年以降の男性に多いが、女性でも発症する。放っておくと重篤な状態になる場合があり、同センターでは小児から高齢者まで、開腹手術や内視鏡手術を行う。
同センターで採用している腹腔鏡下手術の「LPEC法」は、へそから約5㎜のカメラとその横から2㎜の器具を入れて小さな創で手術を行う。「切開創が小さいだけでなく、周囲組織への影響を最小限にする特殊な施術も並行して行っていきます」と話す院長からは、実績に基づいて裏打ちされた自信が伝わる。負担の少ない低侵襲手術となれば子どもはもちろん、高齢者や持病を抱える成人にとっては朗報となる。ただ、高性能な医療機器を使っての小さな創の手術は、積み重ねた経験と技術が必要。手術は院長を始め経験豊富な外科医、小児外科医、麻酔科医、女性であれば婦人科医も連携して行う。基本的に手術は日帰り、もしくは手術翌日に退院可能で、復帰も早い。このような実績から、八代地域のみならず、県内外の各地から治療を求めて患者は足を運ぶ。
一般社団法人 八代郡市医師会 八代北部地域医療センター
