(経皮的僧帽弁クリッピング術)
開胸手術を回避
心臓には、4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)がある。左心房と左心室の間には、「僧帽弁(そうぼうべん)」という弁があり、心臓の鼓動に合わせて開閉している。この僧帽弁の閉じが悪くなり、血液が左心室から左心房に逆流してしまうのが「僧帽弁閉鎖不全症」で、「心臓弁膜症」の一つだ。血液の逆流を防ぐためには、外科手術で僧帽弁を形成または置換するのが選択肢となるが、日本では75歳以上の1割が心臓弁膜症と言われるほど、患者は高齢者に多い。軽症の場合、倦怠感・息切れなどがあっても心臓弁膜症だとは気付かないこともある。しかし悪化すれば心不全を起こし、命に関わるかもしれない。
高齢で胸を切開する手術に耐える体力がないなど、様々な理由で外科手術を避けたい人も多い。そんな患者に福音とも言えるのが、カテーテルの技術を用いた「経皮的僧帽弁クリッピング術」だ。使用するのは、経皮的僧帽弁クリップシステムというクリップ状の新しい器具。僧帽弁の2枚の突起部をそれぞれクリップで挟み込み、それらの弁を引き合わせることで、弁がきちんと閉じるようになる。日本では2018年から保険適用になった新しい治療法だ。
まずは全身麻酔を施し、患者のそけい部(太ももの付け根)から心臓まで、カテーテルを入れる。僧帽弁にクリップをはめて、左心室から左心房への血液逆流が減ったかを確認。エコーの専門医が、エコー付き胃カメラで心臓を撮影しながらクリッピングの位置を確認する(クリップで逆流が止められないケースもある)。
この治療のメリットはいくつかあり、①外科的な弁置換術のような胸を切開する手術が不要。また従来の手術時のように心臓を止める必要がなく、人工心肺は不要。患者の負担が軽い。②高齢者や手術のリスクが高い患者も治療の可能性がある。③基本的に手術中の輸血が不要(必要な場合もある)。④翌日から歩行が可能で、入院期間は1週間程度(心不全管理などの理由で長く入院する場合もある)。
池本先生は、「患者さんの状態によっては外科手術や薬物療法が望ましい場合もあります。しかし外科手術が適用できない方や、本人が手術に踏み切れない方など、あきらめていた患者さんたちでも治る見込みがあるのは朗報です。治療方針は、循環器内科医・心臓血管外科医・麻酔科医などの多職種からなる〝ハートチーム〞で、何度も話し合って決定しています」と患者に寄り添う姿勢だ。
日本赤十字社 熊本赤十字病院
※救命救急センターは24時間体制
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当院は県の基幹災害拠点病院であり、地域がん診療連携拠点病院です。
