CASE8 大動脈弁狭窄症
心臓弁膜症の一つ「大動脈弁狭窄症」は、心臓の出口の扉である大動脈弁が硬くなり、開きが悪くなる病気だ。『熊本赤十字病院』では、「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI・タビ)」や「スーチャーレス生体弁」も開始されている。
カテーテルで生体弁と
置換する新たな治療法
大動脈弁狭窄症が重症化すれば、狭心痛・呼吸困難などが始まり、突然死の危険性が高まるが、開胸する「大動脈弁置換術」しかなかった。しかし大きな傷ができ、また全身麻酔で心臓を止めるため身体への負担が大き過ぎる。そこで10年ほど前から導入されたのが、「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)」だ。血管が太いソケイ部(太ももの付け根)からカテーテルを入れ、生体弁を患者の硬くなった弁と置き換えるので、心臓を止めずに済む。
さらに同院では2021年から、「スーチャーレス生体弁を使用した弁置換」も開始。「スーチャ(縫合)レス(しない)生体弁」のおかげで、心臓停止の時間などが短縮できる。2020年改訂の日本循環器学会の弁膜症治療のガイドラインでは、「80歳以上はTAVI、75歳未満は開胸」だが、必ずしもそうするわけではない。「画像診断や患者さんの状態を考慮し、ベストの方法をハートチームで協議。池本先生は「私ども循環器内科と心臓血管外科の医師・麻酔科・手術の看護師・放射線技師・検査技師・臨床工学技士・理学療法士・病棟の看護師・手続き関係の事務員で定期的に話し合います」と語る。
同院は熊本県で初となる植込み型補助人工心臓の施設認定も受けた。池本先生は、「今後、当院が熊本の心不全治療の一翼を担うことになるでしょう。単に寿命を伸ばすというより、息切れしない快適な暮らしを送っていただきたい。それが大きな目標です」。
096-384-2111