CASE08 緑内障
緑内障は視神経が障害され、視野が狭くなる病気である。初期症状はほとんどなく、気づかないうちに進行するため、日本の失明原因
の第1位となっているという。症状や治療法について佐藤智樹院長に話を聞いた。
気づかないうちに進行
日本の失明原因第1位
緑内障は、日本人の40歳以上の約20人に1人(5%)がかかるといわれている。視野の一部が徐々に欠けていく病状だが、視力は最後まで落ちないことが多く、発見が遅れがちだという。緑内障の原因として眼圧の上昇といわれることがあるが、「実際には日本人の緑内障患者の7割以上は眼圧が正常(正常眼圧緑内障)です。そのため、眼圧が正常だからといって安心はできません」と院長。気づかないうちに進行し、発見が遅れることが失明の原因になるケースが多いという。
早期の段階では症状がほとんど出ない緑内障は、自分で病気に気づくのは難しく、見過ごされやすい。患者が異常に気づくのは、ある日片目をふさいでみて、視野の欠けを感じたときが多い。両目で物を見ることで片方の目の異常がカバーされてしまい、片目だけが進行している場合には長期間気づかれないことがある。また、緑内障の進行は緩やかのため気づきづらく、異常を自覚したときには症状がかなり進んでいることが多い。視野が欠ける範囲は徐々に広がり、最終的には視野がなくなってしまう怖い病気。失われた視野は元に戻らないため、早期発見と早期治療が何より重要だ。「コロナ禍では眼科通院を控えた方が多く、久しぶりに受診した際には症状が進んでいたケースを多く経験しました」と院長は語る。緑内障は治療の効果を実感できないため中断しがちになるが、定期検査と治療の継続が病気の
進行を抑えるためには不可欠だ。
緑内障治療の基本は目薬で眼圧を下げることである。患者の眼圧を適切な範囲内に下げることで、病気の進行を抑えることが期待できる。ただし、目薬には副作用がある場合もあり、充血や目の周囲の肌荒れ、かゆみ、赤みなどが強い場合は、点眼治療を続けるべきかレーザー治療や手術に切り替えるかを検討する必要がある。以前は手術は目への負担が大きかったが、現在では技術が進歩し、負担が小さい低侵襲緑内障手術(ミグス)が行えるようになった。「10分程度で終わる簡単な緑内障手術もあり、日帰りでも行えます」と院長。ただし、手術を行っても、失った視野が回復するわけではなく、今以上に緑内障が進まないようにすることが手術の目的である。緑内障には遺伝的要因が関与するとされており、加齢とともに発症リスクが高まる。そのため、40歳を超えた人や視界に少しでも違和感を覚えた人は、早めに眼科を受診することが重要 だ。また、早期発見のために、40歳を迎えたタイミングでの定期検診が推奨される。
緑内障の診断には、眼圧検査に加えて視野検査や眼底検査を行う。定期検診を受けて基準となるデータを持っておくことで、将来異常が生じた際に早期発見できる可能性が高まる。 「緑内障は完治する病気ではありませんが、適切な治療を続ければ多くの人が視力を維持しながら生活できます」と院長。視力を守るためにも、検診を受けるなど自身の目の健康と向き合う機会を設けたい。



樹尚会 佐藤眼科 熊本

